無鉄砲主人とのエピソード

今、振り返ってみても本当に無鉄砲な人だった。
周りの反対を押し切ってまで、こんな私と結婚までしてくれたのだから。
ふと二十数年前のことを思い出してみる。
そのとき、私はもう結婚をしていた。恋愛結婚で子供は3人。そのときの主人はとてもやさしくてしっかりものだった。
別に、主婦が喜ぶような不倫ドラマも夫のDVなんかもなく、共働きで忙しかったが本当に幸せだった。
その日もいつもと同じように、パート帰りに子供を迎えにいき、夕飯の買出しに近くのスーパーにきていた。
財布を出そうとして気づいた。
普段、絶対に忘れない携帯電話を家においてきてしまった。
しまった!と思った。

いつも夕飯の前に、主人からの「今から帰るよ」電話をうけとっていたからだ。
しかし、20分くらいで終わる買い物だし、あとで謝ればいいやと気にしなかった。
ちょっといやな予感もしたのだけれど。
子供たちと部屋に帰ってきて、携帯の通知ライトがピカピカひかっていたので急いで折り返す。
「?」
もう終わっている時間なのに電話にでない。よくわからない不安感に襲われた私は、職場の上司に電話をかけようとした。
その瞬間に、プルルルルと主人からの着信がきた。同時にかけちゃったのかなと胸をなでおろしたのだが、電話にでたのは主人の上司だった。
落ち着いて聞いてくださいというよくドラマででてくる言葉から始まって、ご主人の乗っていた船が嵐で流されてしまいました、という言葉で私は電話を切ってしまった。
主人は漁師だった。
人間てすごいと思う、こんな状況下でも冷静に次のことを考えているのだ。
これから子供が小学校にあがる、お金はどうしよう、私はどうすればいいのか。
主人のお葬式が終わって初めて涙を流した記憶がある。
子供たちもいつも能天気なお母さんが泣いたことで、やっとお父さんが帰ってこないことに気づいた。
しばらくは、保険などでほそぼそ暮らしてはいたが、片親で子供3人は本当につらかった。
親戚は表面的には優しくしてくれたが、面倒ごとをもちこみたくないのか直接的には関わってこなかった。
途方にくれていた、そんな時に無鉄砲青年が現れたのだ。
そのとき、青年は23歳で私は34歳。最近、まじめな青年が越してきたとは聞いていた。
はじめて会ったときに、彼は一人でつらくないか、みたいなことを言ってきた。
一回りも違うのになんだか頼もしいという印象をうけた。
物好きな人で、子供たちに会いによく遊びにきた。
ある日、結婚しようと突然いわれる。
このバツいち、子供3人、料理のとりえもなく、容姿端麗でもないおばさんを俺が支えると言い出したのだ。
親戚に、若いうちだけだよすぐに根をあげるとか礼儀もないのかなど散々言われようと、婿入りしたのは金目当てだと差別される日が続こうと、
かたくなに私との約束は守った。
どんなに私と喧嘩になっても「お前と結婚して後悔した」という言葉や態度は一切ださなかった。
寝癖だらけで、時代遅れズボンをはいていても、それが私の今の主人である。
自慢の無鉄砲主人である。

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